研究室概要

グリッドコンピューティングのセキュリティ

ネットワークにつながれたコンピュータを利用し,インストラクションやプログラムレベルのスループットの向上を図る,分散処理システムにGRIDコンピューティングシステム(以下,“GRID“と記する)があります.

GRIDには,企業や研究機関内のイントラネットに接続されたコンピュータで構成するインターナルGRIDと,インターネット上に存在するコンピュータで構成するエクスターナルGRIDに分けることができます.

インターナルGRIDは,構成するコンピュータが,その企業や研究機関によって管理されているのに対して,エクスターナルGRIDでは,コンピュータの所有や管理者は,多岐に渡り,実質的に不特定多数といえます.このことから,エクスターナルGRIDでは,不正を働くことを目論む悪意を持った人物(悪人)が所有するコンピュータが紛れ込んでしまう危険性があります.

悪意を持った人物が,行う不正な行為としては,エクスターナルGRIDに投入されたプログラムやデータの内容を読取ったり,盗み取る不正な解析と,正しく処理せず,誤った結果を返すことで,障害や遅延をもたらす改竄があります,

この研究課題は,これらの不正行為に対向する技術の開発を目的としています.

この研究により,これまで無尽蔵と言っても良い計算性能という資源がありながら,セキュリティの点から,ノンプロフィッタブル(非営利目的)の処理用途にしか利用されていなかったエクスターナルGRIDの営利目的での利用や,機密性が要求される利用に供することができるようになります.

個人向け情報配信システムに関する研究

多くの人たちが利用しているテレビやスマートフォンに対して,その利用者に応じて適切な情報を個別に表示する,リコメンド型の情報配信システムの実現に向けての研究を行っています.

テレビ向けには,ユーザの居住地域や利用者の興味に基づいて,利用者の個人個人に応じた情報を選別して, 通常のTV番組と合成して表示します.

この個人向け情報配信システムをPINOT (Personalized Information On Television screen) と名付けています.

PINOTでは,情報表示に対する「スキップ」や「再表示」などの,利用者自身の希望によって行う簡便な操作に基づいて,個人の興味について類推を行います.そして,その興味の類推結果を基に,その人が感心を持ちそうな情報を選択し,画面上に表示します.

また,スマートフォン向けには,ヘッドラインの一覧表示の表示時間や,その後の選択行動から,興味の類推を行い,その結果に基づいて,情報の選択とヘッドライン表示の表示順序を決定します.

いわば,デジタル版の秘書機能を実現する事が,この研究が目指すところです.

分散処理技術を応用した実課題解決に関する研究

研究活動からシーズを産みだし,そのシーズから製品を開発する従来型の研究開発は,実用化に向けての取り組みの中で,超えられない死の谷の存在が存在し,結果的に,単なる取り組みに終わってしまうとの指摘がされています.それに対して,利用者が持つニーズを捉え,それを実現するための技術の選択,さらには,不足している技術の研究を行う,デザイン思考型の開発・研究が注目されています.

分散処理分野では,デザイン思考を取り入れた取り組みの中から,研究課題を見いだすというスタンスで,課題に取り組むことに取り組んでいます.

愛媛大学の南予研究センターや愛南町,さらには,愛南町の漁業従事者との連携により,愛媛県内だけでも毎年数億円に及ぶ被害をもたらしている赤潮被害を低減するための,赤潮の発生予測の取り組みを支援するシステムの開発,,また,予報情報を漁業者に通知するシステムの開発に取り組んでいます.

また,多大な被害をもたらすとしてその備えが求められている南海地震に際し,住民の安全を確保する事を支援する情報通信システムの開発にも取り組んでいます.

LSIの設計・テスト・CADアルゴリズムに関する研究

どのような製品に対しても,それが正しく動くことを保証するためにテストが必要である.LSI(大規模集積回路)においても同様であるが,LSI は非常に複雑であるのでテストが非常に困難である.そのため,設計の段階からテストのことを考慮に入れておく必要がある.もしテストのことを考慮せずに設計された LSI は,テストすることができないと言える.今日の LSI の設計はコンピュータなしでは行うことができず,コンピュータ利用したコンピュータ援用設計 (Computer Aided Design: CAD)とよばれている.

  • テストパターン生成
    LSI に故障があると仮定し,その故障を検出するための入力パターン(テストパターン)を生成する問題.
    —>(さらに詳しく)
  • テスト圧縮
    テストにかかる時間を短くするためには,テストに用いる入力パターン数を少なくすることが必要である.テスト圧縮とはテストの質を落とさずに入力パターン数を少なくする問題.
    —>(さらに詳しく)
  • テスト時の消費電力削減
    LSI は熱に非常に弱い.テスト時の LSI の消費電力を削減する問題.
    —>(さらに詳しく)

分散型ネットワークアプリケーションに関する研究

アドホックネットワーク,ピアツーピアネットワーク,センサネットワークといった,複数の機器が協調して動作する環境下で目的を実現する分散型ネットワークアプリケーションに関する研究を行っています.

アドホックネットワークとは,アクセスポイントなどのインフラを利用せず,タブレット,スマートフォン,ノートPCなどの無線通信が可能な機器同士で直接無線通信を行うことにより構成されるネットワークのことです.機器同士の無線接続は Bluetooth あるいは Wi-Fi Direct により行うことができます.Bluetooth は主にワイヤレスマウスのような周辺機器の無線接続に利用されていますが,数十台の機器を無線接続してツリー型ネットワークを構成することも可能です.

近年は主にタブレット間を Bluetooth で無線接続することにより構成されるアドホックネットワークに関する研究に取り組んでいます.応用例として,教育における利用が挙げられます.あらゆる年齢層において,一方的に知識を伝達する一斉教授法による受動的な学習だけではなく,双方向型授業やグループ学習などによる能動的な学習も重要であることが近年指摘されています.Bluetooth で構成されたアドホックネットワークを利用して双方向型授業やグループ学習を支援するアプリケーションを作成すれば,アクセスポイントに接続できない場合でも利用することができます.また,Bluetooth は Wi-Fi と比較して消費電力が低く,人体等による遮蔽の影響も少ないというメリットがあります.小中学校および高等学校では,今後タブレットを活用した教育が普及すると考えられています.また,今日では多くの大学生,大学院生がスマートフォンを所持しています.それらの機器を教育に活用する方法を検討し,実機を用いた実験により実用性を検証することが本研究テーマにおける課題の一つです.