REDとは
REDとは,「教育(Education)」を,「研究開発(Research &Development)」の活動において行うという高等教育機関における工学教育の営みや,姿勢を表すものです.「教育(Education)」が「研究開発(Research &Development)」活動の中で行われながらも,「研究開発(Research &Development)」に埋没することなく,その中心に位置すると言う事を意図し,「RED」と名付けています.
工学(Engineering)は,新しい知見を得ることを目的とする「研究(Research)」と,人々の役に立つ製品やサービスを生み出す「開発(Development)」を行う「工(たくみ)」を扱う学問領域です.工学と理学は,「自然科学」や,それを略した「科学」,あるいは「理系」という言葉で一括りにされますが,工学(Engineering)と狭義の科学である理学(Science)は,基本的な考え方や姿勢が大きく異なります.理学が,真理の探究を目指すことに重点を置き,人類にとっての新しい知識,知見を増やす活動である「研究」に大きく軸足を置いているのに対して,工学は,「研究」に留まらず,知識や知恵を活かし,新しい社会をもたらす製品やサービスを生み出す「開発」にも取り組みます.「研究」と「開発」のそれぞれに足を乗せていると言えます.歴史の中で,理学分野で活躍した人物としてアインシュタインを,また,工学分野で活躍した人物としてエジソンを例示すると,その違いを理解し易いかもしれません.
「RED」は,工学分野で活躍する人材の育成を,「研究開発(Research &Development)」の場で行うという思想です.しかし,ただ「研究開発(Research &Development)」をしていれば,人は成長するというものではありません.人材の育成も,効果的に行う事が大切です.この効果的に学習者の能力を高める取り組みこそが「教育」です.
「RED」は,単に,「教育(Education)」と「R&D」の両方を行うというのではありません. 「教育」を中心に据え,「教育」の成果,つまり,人材の育成の成果をより高めるものとして,「研究開発(Research &Development)」を活かしていくという思想です.ここで念のために申し添えると,「教育」中心であるということが,「研究開発(Research &Development)」を中途半端に行うことになるという理解は,全くの誤解です.「研究開発(Research &Development)」への真剣な取り組みは,「知恵」と「コンピテンシー」の育成に高い効果をもたらします.一方で,「研究開発(Research &Development)」への真剣な取り組みをするだけで,「知恵」と「コンピテンシー」が育成されるほど,単純なものではありません.
「知識」,「知恵」,「コンピテンシー」を効果的に高める働き掛けが「教育」です.「教育」による「知識」,「知恵」,「コンピテンシー」の高まりが,「研究開発」の進展を進め,「研究開発」の活動が,「教育」効果を高めます.
この好循環を実現する基本となる考え方・コンセプトが「RED」です.